ご挨拶

武笠 晃丈

第45回日本脳腫瘍病理学会学術集会

会長 武笠 晃丈

(熊本大学大学院生命科学研究部 脳神経外科学講座 教授)

このたび、第45回日本脳腫瘍病理学会学術集会を、2027年6月25日(金)・26日(土)の2日間、熊本城ホールにて開催させていただくこととなりました。歴史ある本学会を熊本の地で開催できますことを、たいへん光栄に存じます。

今回の学術集会では、
「分子の時代における実相観入 ― 形態・分子・臨床をつなぐ脳腫瘍病理 ―」
をテーマに掲げました。

「実相観入」は、歌人・斎藤茂吉が用いた言葉として知られています。私はかつて、神経病理学の大家である故・平野朝雄先生の勉強会において、この言葉を病理に向き合う者の姿勢として教えていただきました。なお、本学術集会ポスターに用いた「実相観入」の文字は、その際にいただいた故・平野朝雄先生の直筆によるものです。その時から私なりに、「対象を深く観察し、その本質に迫ること」と理解し、長く心に残っている言葉です。

脳腫瘍病理学は今、大きな変革の時代にあります。従来、顕微鏡で腫瘍の形態を詳細に観察することが病理診断の根幹でしたが、現在では遺伝子変異、DNAメチル化プロファイルをはじめとするさまざまな分子情報が診断に不可欠となっています。さらに、空間オミクスやAIをはじめとする新しい技術も急速に発展し、腫瘍をこれまで以上に多面的に捉えることが可能となってきました。

しかし、分子情報がどれほど増えても、病理学の本質は変わらないのではないかと私は考えています。形態を観ることも、ゲノムやエピゲノムを解析することも、腫瘍という対象を深く観察し、その実像に迫ろうとする営みであることに変わりはありません。分子解析によって得られる情報もまた、腫瘍の実相に迫るための新たな「観察」の手段であり、そこにも「実相観入」の精神を通わせたいと考えています。また、分子の時代においてこそ、形態、分子、そして患者さんの臨床像を互いに切り離すことなく、統合して理解することが重要になっています。

本学術集会では、形態病理、ゲノム・エピゲノム解析、オミクス解析、neuroscience、AI、術中診断、そして分子診断の臨床実装など、多様な視点から脳腫瘍の「実相」に迫る企画を準備しています。また、海外招待講演には、神経病理医であるFelix Sahm先生(Heidelberg University Hospital)をお迎えする予定です。脳腫瘍の分子病理学の第一線で活躍される先生のご講演を通じて、脳腫瘍病理学の現在地と今後の展望について、参加者の皆様とともに考える機会にしたいと思っております。

さらに、脳腫瘍病理検討会や一般演題を通じて、日常診療における診断の難しさや、新たな研究成果についても活発に議論できる場にしたいと考えております。本学会の特色である病理医、脳神経外科医、基礎研究者など異なる立場の参加者が一堂に会し、分野や世代を越えて交流できる機会を大切にしたいと思います。

熊本は、雄大な阿蘇、豊かな水、そして熊本城に象徴される歴史と文化を持つ街です。学術的な議論とともに、熊本での時間も楽しんでいただければ幸いです。

2027年6月、皆様を熊本でお迎えできますことを心より楽しみにしております。多数の皆様のご参加をお願い申し上げます。

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